首相や大統領も感動した“お城のホテル”。前G7開催地、ドイツ・エルマウ城とは

T-saite(蔦屋書店)2017/03/08 配信

G7の貴賓達も虜にしたエルマウ城100周年記念イヤー

エルマウ城

 現在G7伊勢志摩サミットで湧く日本だが、昨年の開催地エルマウ城が今年100周年を迎えるに当たり、サミット後も引き続き注目されている。ドイツ連邦共和国のアンゲラ・メルケル首相が強く勧めたということもあり、開催が決定した当地。バイエルン王ルードヴィッヒ2世もお気に入りの場所だったというこの地の素晴らしさは行ってみないと分からないかもしれない。

 「100周年が頂点なのではなく、次の100年に繋げるため、1回きりのイヴェントはしたくない」と城主のディトマー・ミュラー=エルマウ氏は語るが、それでも折角の100周年の今年に訪れることをお勧めしたい。

アクセス 

 ドイツのミュンヘンやオーストリアのインスブルクなどから電車で最寄り駅Klaisに向かおう。到着時刻を予め知らせておくと、専用車が迎えに来てくれるサービスもある。山道を抜けてそのお城にたどり着いた時には、そのセレブ感にため息を禁じ得ない。

 「図書館のように本が読める」という、冬は暖炉の火が和ませてくれるバーを横目にお部屋へ向かうと、そこでは趣味のよいインテリアで飾られた広々とした空間が出迎えてくれる。窓の外には美し過ぎる光景が広がり、気分は昂る。

 贅沢な浴室も充分居心地が良いのに、そこに準備されているバスローブとスリッパがスパへ誘うのには抗えない。

スパ 

 専用の更衣室のロッカーにスパバッグを入れ、ドリンクやドライフルーツなどが供されているソファを抜けると目に飛び込んで来る屋外プール。ここは裸でも泳げる(!)混浴プール。でも、大自然の中では違和感を感じない自分に驚くだろう。子供連れとはプールが分かれているので、瞑想しながら泳ぐ大人も、はしゃいで遊ぶ子供も皆自由に自分の世界に浸れる。サウナやレストルームも充実している。

レストラン

 100周年記念記者会見出席者の中では唯一のアジア人だったが、城主は「日本人が同席してくれているので」と安倍首相のエピソードを語ってくれた。「日本人は相手に遠慮する細かい心遣いを常に出来る民族なので、朝食にも和食ではなくサンドイッチを望まれました。そこでシェフ長のマリオ・コルティが15種類の異なる具のサンドイッチを運ばせたところ、直々に御礼を言われた」と、城主は誇らし気だった。

 また、サミットに際して、タイ料理好きなメルケル首相のために、タイ料理とドイツ料理をミックスで注文できる唯一のレストランも完成させ、タイからシェフを呼んだ。G7に饗されたメニューにはトム・カ・カイが入っていたという。実派難民問題は、G7準備期間から浮上していたもので、これも「世界に開かれたドイツ」のシンボルを意味しており、実際10人の難民を雇用しているという。この地に週単位で滞在する常客のために、ホテル内に4店のハイレベルなレストランが展開されているので、どこで食べても美味しく飽きさせない。

自分の身体を可愛がろう!     

 そして今年は同じサミットでも、ヨガサミットが6月12日から17日まで世界から18人のカリスマトレーナーを呼んで開催されるという。スパダイレクターのインケ・ケーニッヒ女史は通常でも年間1000コースほどのヨガコースを催し、メルケル首相も「リラックス政治」としてG7で推奨していたという。 その他太極拳や中国医学、指圧や灸も提供しているため、オバマ大統領もマッサージを受けたそうだ。ヨガ・パヴィヨンは」「京都などの日本建築からインスピレーションを得ており、屋根の外観に見られる曲線を内装にも統一させた」と、その設計にも関わったという城主は自慢気だ。その他トレッキングや、ランニングレッスン、子供のための各種スポーツキャンプもある。

「音楽と文学のない最上級ホテルはあり得ない」

 このお城で生まれた城主は、若いうちはホテルを継ぐ気はなく、コンピュータ会社を設立するも、運命のいたずらか、ホテル業に戻ってくることになる。そんな彼にとって、超一流ホテルは第一に食、第二にスパ、第三に友人、第四に音楽や文学を、アマチュアではなくトップレベルで提供することが必須とし、この第四の条件のために、夜は世界のトップアーティストが名を連ねるコンサートが開かれる。こちらも年間200回ほどの演奏会や朗読会、政治討論会が開かれているが、出演者は皆、アーティストダイレクターであるシルケ・ツィンマーマン女史の人脈で、ノーギャラでもバカンスがてら来てくれるのだという。マルタ・アルゲリッチやギドン・クレーメル、ダニール・トリフォノフやゴーティエ・キャプソンなど世界でもてはやされている彼らをも満足させてしまうのがこのエルマウ城のホスピタリティなのだ。

 「世界中のどのホテルよりも上質なサービスを提供している自負がある」と城主は豪語するが、それでも常によりパーフェクトを目指しているという。

 最高のおもてなしを受けて、自然の懐に抱かれ、新たな力を充電できる最高の隠れ家だ。

中 東生